赤青黄色
2002年 10月 25日
電車に坂本龍一の3枚のベストアルバムの中刷り広告があった。妙に気になった。しばらく見つめていて、はたと気づいた。
アルバムのジャケットだ。特にその色使い。
3枚のアルバムは、同じデザインで、それぞれ赤、青、黄色。
どこかで見た覚えがある。
などと回想するまでもなく、私はもう気づいていた。
これ、もしかして、ビートルズの赤盤・青盤がモチーフなのでは?
ビートルズの「赤」「青」は、正式には「The Beatles 1962-1966」「The Beatles 1967-1970」という。タイトルどおり、彼らがメジャーデビューしてから解散に至るまでを前後半に分け、英国におけるすべてのシングルA面曲を中心に、代表曲をほぼリリース順に収録したもの。最初の発売は解散から3年後の1973年で、選曲には元メンバーのジョージ・ハリスンが関わったらしい。いずれも2枚組で、合わせて54曲(活動時の公式発売曲のほぼ4分の1)が収録されており、いわばビートルズの入門編として最適のアルバム。私も、最初に買ったのが、この2タイトルだった。
さて、上のリンク先で、これらのジャケットをご覧いただきたい。デザインはもちろん、写真の中味も、同じ場所で、ビートルズのメンバーが同じ配置で並んでいる。違っているのは4人の風貌だけだ。撮影したのは「赤」が1963年、「青」が1969年。場所は、彼らが所属していたレコード会社・EMIのビルにある階段である。
これは見事なコントラストだろう。ちなみに、それぞれの裏ジャケットには、互いの表ジャケットの写真が交換されている。つまり、「赤」の裏ジャケには「青」のジャケ写、「青」の裏には「赤」の表が配置されている。これを初めて手にした当時、中学生だった私は、もうそれだけでカッコいいと思ってしまった。よく考えれば、解散後に出たベスト盤であり、いわば「作られた」作品なのだが、それまで、そんな美しさをレコード(CDではない)に見出したことはなかったのだ。
坂本教授の今回の3枚は、これとそっくりでしょう? かたや時代順、かたやカテゴリー別と、分け方こそ違えど、おそらく教授自身の念頭にも、あの2枚があったのではないかと想像するのだが、どうだろうか。
ちなみに、ビートルズの「赤」のジャケ写は、ファーストアルバム「PLEASE PLEASE ME」のジャケ写のバージョン違い。もちろん、同じフォト・セッション時に撮られたものだが、よく見ると微妙に違う。
そして「青」のほうだが、これは69年にリリースされる予定だった
「GET BACK」というアルバムのジャケットに使われるはずだった写真である。当時のビートルズは、メンバー間でのいさかいや気持ちのすれ違いが絶えず、常にギクシャクしており、確実に解散へのカウントダウンが始まっていた。
69年初頭、彼らは新しいアルバム「GET BACK」の制作に入ったが、ダラダラとしたセッションが続くばかり。あまりのまとまりのなさに、デビューからずっとプロデュースを担当してきたジョージ・マーティンもサジを投げ、アルバムは空中分解。それでも、何とか形にしようと、グリン・ジョンズにプロデュースを託すが、1回目の編集はボツ。その後、収録曲をいじり「LET IT BE」とタイトルを変えるも、結局うまく行かず、ついにお蔵入りになってしまう。
そんな最中に、それでもジャケ写は撮影された。これは、いわば自身のファーストアルバムのパロディーであり、解散こそ明言してはいなかったが、おそらく4人とも「これが最後」という意識があったのではないか。だからこそのパロディー写真ではないかと、私は思う。
※下線部については後に「真相」が明らかになりました。
「これだから、やめられない」の項を参照ください(05.11.29記)
だが、結局、アルバムは発表されず、ジャケ写も当然ボツになった。その後、彼らはもう一度集結し、後期の代表的作品と称される「ABBEY ROAD」を発表する。だが、「GET BACK」は、そのセッション/レコーディング風景が撮影されていた。映画として配給することになっていたからだ(本当は、それも二転三転しているのだが、ここでは割愛)。
おそらく、その関係で、「GET BACK」はどうしても世に出さなければならなかったのだろう。音源テープはフィル・スペクターの手に渡り、彼独特のサウンド・エフェクトによって「蘇生」された。それが、公式に発表された「LET IT BE」だった。
紆余曲折を経て、元の音源からかなり修復された形で、アルバムは一応、日の目を見たが、この時、なぜかジャケットは差し替えられた。そして、ようやく73年、「青」のジャケットに使用されたのである。写真を見比べると、どうやらこれもバージョン違いのようだ。
ともかく、こんな感じで、69年のビートルズは、かなりゴタゴタしていた。発売順では「LET IT BE」が最後にもかかわらず、「ABBEY ROAD」が「実質的なラストアルバム」とよく言われるのも、実はこんなところに理由があるのである。
ビートルズに話が偏りすぎた。坂本龍一に話を戻す。
例の3枚のうち、私があえて1枚だけ選ぶとしたら、「青」と少し悩んだ後、たぶん「黄」を取る(笑)。CM曲というのは、こちらが意識していなくてもどこかで聞いている可能性が高いから、「ああ、あれかあ」なんて言いながら楽しめそうだし、曲目リストによれば、不採用作品なんてのもあって、面白い。あの世界のサカモトがソデにされた作品って、どんなだろう? 聴いてみたい。
それに、50曲も入ってるから、お得感もありそうですし(笑)。
アルバムのジャケットだ。特にその色使い。
3枚のアルバムは、同じデザインで、それぞれ赤、青、黄色。
どこかで見た覚えがある。
などと回想するまでもなく、私はもう気づいていた。
これ、もしかして、ビートルズの赤盤・青盤がモチーフなのでは?
ビートルズの「赤」「青」は、正式には「The Beatles 1962-1966」「The Beatles 1967-1970」という。タイトルどおり、彼らがメジャーデビューしてから解散に至るまでを前後半に分け、英国におけるすべてのシングルA面曲を中心に、代表曲をほぼリリース順に収録したもの。最初の発売は解散から3年後の1973年で、選曲には元メンバーのジョージ・ハリスンが関わったらしい。いずれも2枚組で、合わせて54曲(活動時の公式発売曲のほぼ4分の1)が収録されており、いわばビートルズの入門編として最適のアルバム。私も、最初に買ったのが、この2タイトルだった。
さて、上のリンク先で、これらのジャケットをご覧いただきたい。デザインはもちろん、写真の中味も、同じ場所で、ビートルズのメンバーが同じ配置で並んでいる。違っているのは4人の風貌だけだ。撮影したのは「赤」が1963年、「青」が1969年。場所は、彼らが所属していたレコード会社・EMIのビルにある階段である。
これは見事なコントラストだろう。ちなみに、それぞれの裏ジャケットには、互いの表ジャケットの写真が交換されている。つまり、「赤」の裏ジャケには「青」のジャケ写、「青」の裏には「赤」の表が配置されている。これを初めて手にした当時、中学生だった私は、もうそれだけでカッコいいと思ってしまった。よく考えれば、解散後に出たベスト盤であり、いわば「作られた」作品なのだが、それまで、そんな美しさをレコード(CDではない)に見出したことはなかったのだ。
坂本教授の今回の3枚は、これとそっくりでしょう? かたや時代順、かたやカテゴリー別と、分け方こそ違えど、おそらく教授自身の念頭にも、あの2枚があったのではないかと想像するのだが、どうだろうか。
ちなみに、ビートルズの「赤」のジャケ写は、ファーストアルバム「PLEASE PLEASE ME」のジャケ写のバージョン違い。もちろん、同じフォト・セッション時に撮られたものだが、よく見ると微妙に違う。
そして「青」のほうだが、これは69年にリリースされる予定だった
「GET BACK」というアルバムのジャケットに使われるはずだった写真である。当時のビートルズは、メンバー間でのいさかいや気持ちのすれ違いが絶えず、常にギクシャクしており、確実に解散へのカウントダウンが始まっていた。
69年初頭、彼らは新しいアルバム「GET BACK」の制作に入ったが、ダラダラとしたセッションが続くばかり。あまりのまとまりのなさに、デビューからずっとプロデュースを担当してきたジョージ・マーティンもサジを投げ、アルバムは空中分解。それでも、何とか形にしようと、グリン・ジョンズにプロデュースを託すが、1回目の編集はボツ。その後、収録曲をいじり「LET IT BE」とタイトルを変えるも、結局うまく行かず、ついにお蔵入りになってしまう。
そんな最中に、それでもジャケ写は撮影された。これは、いわば自身のファーストアルバムのパロディーであり、解散こそ明言してはいなかったが、おそらく4人とも「これが最後」という意識があったのではないか。だからこそのパロディー写真ではないかと、私は思う。
※下線部については後に「真相」が明らかになりました。
「これだから、やめられない」の項を参照ください(05.11.29記)
だが、結局、アルバムは発表されず、ジャケ写も当然ボツになった。その後、彼らはもう一度集結し、後期の代表的作品と称される「ABBEY ROAD」を発表する。だが、「GET BACK」は、そのセッション/レコーディング風景が撮影されていた。映画として配給することになっていたからだ(本当は、それも二転三転しているのだが、ここでは割愛)。
おそらく、その関係で、「GET BACK」はどうしても世に出さなければならなかったのだろう。音源テープはフィル・スペクターの手に渡り、彼独特のサウンド・エフェクトによって「蘇生」された。それが、公式に発表された「LET IT BE」だった。
紆余曲折を経て、元の音源からかなり修復された形で、アルバムは一応、日の目を見たが、この時、なぜかジャケットは差し替えられた。そして、ようやく73年、「青」のジャケットに使用されたのである。写真を見比べると、どうやらこれもバージョン違いのようだ。
ともかく、こんな感じで、69年のビートルズは、かなりゴタゴタしていた。発売順では「LET IT BE」が最後にもかかわらず、「ABBEY ROAD」が「実質的なラストアルバム」とよく言われるのも、実はこんなところに理由があるのである。
ビートルズに話が偏りすぎた。坂本龍一に話を戻す。
例の3枚のうち、私があえて1枚だけ選ぶとしたら、「青」と少し悩んだ後、たぶん「黄」を取る(笑)。CM曲というのは、こちらが意識していなくてもどこかで聞いている可能性が高いから、「ああ、あれかあ」なんて言いながら楽しめそうだし、曲目リストによれば、不採用作品なんてのもあって、面白い。あの世界のサカモトがソデにされた作品って、どんなだろう? 聴いてみたい。
それに、50曲も入ってるから、お得感もありそうですし(笑)。
by hibinag
| 2002-10-25 14:33
| 05-1.Beatles