慌てなくていい。急がなくていい。前を向いて、少しずつ。地に足つけて、一歩ずつ。


by hibinag
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バケツチャーハンを攻略せよ!

皆さんは「バケツチャーハン」という食べ物をご存知だろうか?
これは、私がバケツチャーハンと出会ったことによる苦闘と嗚咽のドキュメンタリーである。


(1)
私とバケツチャーハンとの出会いの場所は北海道である。

私の高校時代の友人に、K谷というのがいる。
K谷は高校卒業後、北海道の大学に進学。
大学1年の春休み、私は彼の下宿を訪ねた。

着いた日の夜、K谷は言った。

「明日の朝、ええもん食いに連れていったる」

「なんや、ええもんて」

バケツチャーハンや」

「バケツチャーハン!?」

「そ。まあ、明日のお楽しみや」

ニヤニヤしながら、私に晩飯を抜くことを薦めるK谷。
どうやらスゴいボリュームのものらしい。
言い知れぬ不安を抱きながらも、彼に従う私。
なぜ北海道に来てまで不安にならねばならんのか。


(2)
かくして憔悴と諧謔と恍惚に満ちた夜は明けた。どんな夜だ。

K谷は学友2名を誘い、いざ店へ。
店は、これといって特徴のない普通の中華屋。
K谷はとっとと店の主人にオーダーする。

チャーハン大1つと、普通のチャーハン3つ」

って俺だけかい! 君らは食わんのかい!

どうやらほかの3人は、自分の食事のことなどどうでもいいらしく、
ただただ私の悪戦苦闘ぶりを見て楽しもうという算段らしい。
K谷はともかく、あとの2人は初対面だぞ!
ひどいや姉さん! カツオくんかい。

焦燥と狂騒と脂汗にまみれた数分間を過ごした後、
我々の前にそれはいよいよ姿を現した。


「……デカッ!


私が思わず漏らした一言を聞いて、ほかの3人が笑った。
目が「そうだろ?」と言っている。

今、私の目の前にあるもの。
それはK谷の表現を借りるなら、


子供が砂場で遊ぶときに使うバケツに
チャーハンをギュウギュウ詰めにして
皿の上に引っ繰り返したもの
(味噌汁つき)



驚いたことに、これで値段はたったの550円
ヨシギュウの特盛より安いぞ。
ヨシギュウはまだまだ営業努力が足りませんな。
※ちなみに味噌汁は普通のサイズです。


いや、今そんなことはどうでもいい。



これを食うんですか!?


私が!?




さらにK谷が無情のひとこと。

「ここのおっちゃん、残すとコワイからな。絶対残すなよ


ひえ~~~~っ!!

もはや退路は完全に絶たれた。万事休す。お父さんお母さん今まで育ててくれてありがとう。


え~~いままよ!
おもむろにスプーンをつかむ。
とりあえず食うしかない!
な~に、こっちは昨日の夜から何も食ってねえんだ。
誰もが悶え苦しんだというバケツチャーハン、絶対に制覇してやる!
やや内角からえぐりこむように…

食うべし!
食うべし!
食うべし!
食わない!
食います!
食う!
食うとき!
食えば!
食え!
五段活用してどうする。

もとい!
食うべし!
食うべし!
食うべし!
食うべし!
食うべし!
食…



なんやこれ!?



皿が全然見えん!!



(3)
食っても食っても見えてこない皿の表面。
なぜだ?
眼鏡が曇ってるから?
違う、食っても食っても底までたどり着けない!
米が減らん!
輸入自由化反対!←関係ないし

私の満腹中枢はすでに指令を出しつつあった。
「スペクトルマンニツグ。タダチニ、ヘンシンセヨ」←違

しかし、まだ半分も食ってないんちゃうか?
ヤバイっすよマジで。
もう帰らせてくれ。

が、しかし。
私の周りには悪友K谷とその友人たち。
俺が食わなきゃ、こいつらの命はどうなる?←壊れかけ
父ちゃん俺はやるぜ!←キャラ変わってるぞ






それからどれほどの時間奮闘したのか。
体中の汗腺という汗腺を開き、
漏れんばかりの勢いで消化液を分泌しながら、
私はついに完食した。

「よう食ったなあ」
「おめでとう!」
「感動した!」
3人から賞賛の声が飛ぶ。
ありがとう友よ。
我々は暴君ディオニスに勝ったのだ!←違

今までに感じたことのない種類の疲労感と達成感を胃袋に抱えながら、
我々は店を後にした。
オヤジ、うまかったぜ。
いえ、ほんとは

味わう余裕などありませんでした(泣)。



ともかく、戦いは終わった。
札幌観光にでも行くか。

「どこに行きたい?」
K谷が声をかけてくれた。
私は答えた。

「いや、ちょっと待ってくれ。


腹が苦しすぎて、直立できん



そう、私はその後しばらく、前かがみ状態で札幌の街を歩くことを余儀なくされたのだった。

ったく、はるばる北海道まで来て、何をやっているのか。



文中、K谷くんやその学友たちのことを意地悪な人たちのように描いていますが、
ほんとはみんないい人です。K谷くんは、すごく心のあったかいヤツです。
でなきゃ、わざわざ北海道まで遊びに行ったりしません、って何でフォローの文字がこんなに小さいのよ(笑)。

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by hibinag | 2002-04-26 23:46 | 01.日常雑記